美術展と小説をススめる音楽家

古いもの好きの現代人

コンスタブル展と英国の風

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3月にしては暑かった或る日、

三菱一号館美術館で2021年2月20日から5月30日まで開催している

「テート美術館所蔵 コンスタブル展」に行ってきました。

 

コロナ禍のなか、イギリスから遥々やってきた絵とグッズたち。

タイトルにもあるように、私は紅茶を記念に買って帰りました。

 

 

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それと、実は初めて足を運んだ三菱一号館美術館

アリス症候群の実体験ができてしまう建築で、それもまた楽しめたひとときの内です。

 

開催の概要や展示の感想、グッズについて書いていきたいと思います。

 

 

 

 

開催と会場について

 

開催会場三菱一号館美術館

東京駅直結の行き方もあり、

有楽町駅、日比谷駅からも行けます。

特設サイト↓

テート美術館所蔵 コンスタブル展|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

チケット価格

大人1,900円 高校・大学生1,000円 小・中学生無料

当日券と日時指定券の2パターンで発売されています。

学割のチケットは当日券のみなので注意。

ちなみに、平日13時頃に会場に着いた学生の私。

問題なく買えました。

 

検温とアルコール消毒:勿論完備。 

 

ロッカー:複数の場所に在りました。 

音声ガイド:なし

写真撮影:最後の順路の展示品《虹が立つハムステッド・ヒース》のみ写真撮影可能

混雑具合:平日に行きましたが、観るのに少し並んで待つくらいには人の数がありました。

フロア:エレベーターで上向し3階からスタート。途中2回トイレ・ベンチ休憩ができる順路です

再入場:不可

 

 

 

 

全5章でジョン・コンスタブルと触れ合う

 

まずは各章を軽くご紹介。

 

第1章「イースト・バーゴルドのコンスタブル家」

コンスタブルの生まれの地、イースト・バーゴルドにまつわる作品からこの展示は始まります。

 

第2章「自然にもとづく絵画制作」

麦畑や小道、父親の仕事場の外の風景など、身近な風景画を描き始めます。

 

第3章「ロイヤル・アカデミーでの成功」

家庭のためにロイヤル・アカデミーで栄光を捉えようと励むコンスタブル。

准会員になることができ、展示用の大型絵画から家庭用小型絵画を描きます。

 

第4章「ブライトンとソールズベリー」

リゾート地のブライトンと、大聖堂の建つソールズベリー。

コンスタブルの心情的にも対立した地での絵が見れます。

 

第5章「後期のピクチャレスクな風景画と没後の名声」

ピクチャレスクとは「絵の主題としてふさわしい」実際の風景のこと。風景画の最骨頂がここで見れます。

 

 

 

お気に入りと感想

 

今回の展示では7つの作品がお気に入りになりました。

 

 

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 ©Tate

No.7「教会の入り口、イースト・バーゴルド」

左下に座る3人の人物。老人と青年と少女。

人間の若さと老いを教会の前に描いています。

こういう表現の仕方が私はとても好きです。

 

 

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©Tate

No.18「デダムの谷」

この絵画を前にした時、まるでそこに立っているかのような感覚を味わえました。

絵画鑑賞緒において、旅行の疑似体験をするのが好きな私は、

コンスタブルの通学路に立ち、眼前に広がる谷を見つめ、

彼の母校に思いを馳せていました。

 

 

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©Tate

No.21「モルヴァーン・ホール、ウォリックシャー」

大型絵画なのですが、彼はこれを1日で完成させました。

とてもそうは思えない精密さと、誇張のない自然の魅力を併せ持つように感じます。

 

 

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©Tate

No.46「ハムステッドの木立」

木立の影と、太陽の光がとても対極的で、

でもそれは自然のなかであり得ることだという

奇跡の両立を改めて実感し、その美しさに心を打たれます。

 

 

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©Tate

No.47「雲の習作」

今回の展示のウリのひとつでもあるこの作品。

画面には雲だけが描かれています。

他の風景画で描かれるような雲とはまた一味違って、

私はこれを天国への途中に漂う雲のように感じました。

 

 

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©Tate

No.53「ハーナムの尾根、ソールズベリー」

コンスタブルの絵は「空気」の描写が最大の魅力と言われています。

私は「空気」というよりは「風」を感じました。

この作品はまさにそれを感じて、草木の香りを運ぶイギリスの田舎の空気を鼻と肌に感じた気がしました。

 

 

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©Tate

No.59 -12「ストゥーア川の水門」

No.59の作品は全部で21作品あり、これらはコンスタブルが原画を作り、デヴィット・ルーカスがそれを版画にしました。

他者の手が加わることにより、彼らしさが損なわれてしまうのですが(これについてはコンスタブルも文句を言っていた)

この「ストゥーア川の水門」はとても気に入りました。

この絵は私の理想の空間のようで、まるで前世の記憶が蘇って故郷に涙するように視界が滲みました。

 

 

 

No.55「ウォータールー橋の開通式」と

No.56「ヘレヴーツ・リュイスから出航するユトレヒトシティ64号」が、

ロイヤル・アカデミー展でのコンスタブルVSターナーの並びです。

 

油彩で色濃く描いたコンスタブルに対抗して、

同じく油彩とはいえ光射し込む潮風を幻想的に描いたターナー

最後の仕上げの日にわざと赤色を付け足しました。

 

この一連のエピソードについては、会場でも原本とともに紹介されていますので

実際に足を運んで、2つの絵画が並んだその状況を体感してみるのがお勧めです。

(先に知りたい方は本展公式特設サイトをご覧いただくか、

「コンスタブル ターナー 銃」と調べてみるといいでしょう)

 

 

展示の順路を終え、グッズのブースに行くと

これらの絵のモチーフの地の写真が飾られています。 

 

写真の技術が普及した今だからこそ、

その写真と風景画を見比べてみることに意味と、

風景画の醍醐味を再確認できると私は思います。

 

 

イギリスを推したグッズ

紅茶好きの私ですが、油断をしていました。

英国出身の画家のグッズブースに、紅茶が置かれることは容易い予想だったはずなのに……。

 

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とりあえず約3000円と茶葉を引き換えました。

 

Tetlyの方は向こうのスーパーで売っているような一般的なもので、

DARVILLES OF WINDSORは英国王室御用達のメーカーです。

 

この紅茶については別の記事にて、解説と感想を書きたいと思います。

 

 

グッズの人気としては、

マグカップ(『チェーン桟橋、ブライトン』を原寸でトリミングし、

3種類のカップにそれぞれ違う箇所の空を写している)

が一番売れているそうで、入荷待ちになっているらしい。

 

 

まとめ

当たり前ではありますが、

やっぱり生で絵を見ると

写真とはまた違う自然の躍動感を筆使い・色使いで体験できて、新鮮さを味わえます。

 

とはいえ、私は海を渡ったことがないので

風を感じたとしてもそれは日本の風しか知らないわけで……。

 

ですが、本物を知っているからこそ感じることもあり

本物を知らないからこそ感じることもあるわけで

どっちが良いとは一概に言えないのも、また然りかと思います。

 

このコロナ禍、海外旅行も行けないですし

この展示でイギリスの空気を感じるのもいいかもしれません。

 

日本では35年ぶりのコンスタブルの大回顧展を是非楽しんでみてはいかがでしょう。